八雲の国から末広がり

旧八祐会ブログ

おひとりさまのレストラン

ほぼ日刊イトイ新聞」にて、毎週木曜日に「おいしいお店とのつきあい方。」というコラムがある。このサカキシンイチロウさんが書く文を読むと、とても優雅な気分にひたれるのでいつも楽しみにしている。しかし、その中で非常に残念に思う記事があった。昨年のクリスマス前のことだった。

内容は、4週間にわたって「おひとりさま」のレストランにおける所作みたいな内容の記事。はじめは私も興味があるのでふむふむと読み進めていたが、しだいに雲行きが怪しくなった。そしてついには心が深く傷ついた。いや、傷はもともとで、その傷を治そうと一生懸命にかさぶたを作っているところで、そのかさぶたをバリッとはがされてなおかつ塩を塗りたくられたという気持ちだった。

先ずはこの記事。http://www.1101.com/restaurant/2011-12-08.html

この中で、私のようなおひとりさまは、①③④のように見られてしまうのだろう。でも一応私なりには気をつけているんだけども、それを相手がどうとるかは分からない。

で、サカキさんは「ダイニングパートナー」を作ろうと提案する。その記事がこれhttp://www.1101.com/restaurant/2011-12-22.html

うん、おっしゃることは十分に理解できる。でもねえ、そうじゃないんだよな。「シアワセ」になりたいんじゃなくて、ただ普通に食事がしたいだけなんだけどな。レストランてそんなにエライところなのかな?

私のようなやもめにとって、サカキさんのいう「レストラン」に行くのはたしかに無謀ともいえる。フレンチレストランとかはお祝いやデートといった特別な日に来ている人が多いとは思う。だから普段は近寄らない。でも、そんな私たちでも「ハレの日」には、アウェーを覚悟しながらもそういうところで食事をしたくなるんですよ。で、昨年の秋にそれを実行した。傍目にはおひとりさまなんだけど、私は妻と食事をした。昨今のおひとりさまブームでそこのフレンチレストランも、私以外にもひとりで食事をしている人はいる。私もそのひとりにすぎないから、場の空気を乱しているとは思わなかった。でもひとりで食事をすること自体がレストラン側にとってそんなにも奇異に映るとは思ってもいなかった。

記事全体を通して、サカキさんは「シアワセ」を殊更に強調する。まるで「シアワセ」な人以外は入店禁止とさえ思えるほどに。ならば「元シアワセ」の私はもうその空間には入ってはいけないのだと、場違いなのだと思い知らされた。妻のみならず想い出さえも奪われてしまった気にさせられて、ひどく落ち込んだ。

別にレストランにこだわる必要はないんだと、私は気持ちを切り替えた。サカキさんも、日本には寿司屋や天ぷら屋などといったおひとりさまでも十分にシアワセになれる空間があるんだからと代案をだしてたし。そりゃそうだ、わざわざひとりでフレンチを食う必要はない。どうしてもフレンチを食べたければ、ホテルのルームサービスで食べればいい。その方がこっちとしても気が楽だ。

失恋レストラン」みたいなのがどこかに実在してないかと本気で思った。また、料理教室に通って俺がフレンチを作れるようになったろか、とも。

将来的には「おひとりさま歓迎」の看板をだすフレンチレストランが現れると予想する。そうしたらまたレストランに足を運んでみようかな。それまではお互いの為にも近寄らないようにしとこう。