五番街57丁目
ニューヨーク、五番街57丁目。ティファニー本店。
無理だった。思った以上に無理だった。
身体がどんどんビッグフット化していくゆえ、いま結婚指輪ができない状態に。そこで、新たに安めの指輪買っちゃう?ってノリで気軽に足を踏み入れたのですが…。
キラキラしてた。めっちゃキラキラしてた。
そのキラキラに網膜がやられ、脳みそがやられた。
彼女がここで私たちの指輪を買ったことを想像し、私がここで彼女の指輪を買ったことを思い出して、目からナイアガラしそうになった。
それからは禅僧のごとく、無の境地をつくりだすことで精一杯だった。
無理。買物なんて、店員さんと話をするなんて、とてもじゃないができない。
私が左手の薬指に試着したら何て言ってくるんだろうと想像しただけで、ナイアガラ。
また元通りに痩せれば済む話なので、指輪は買わないことにした。
むかついたから文具でも買おうと思ったが、それもいまいち気分が乗らなかった。
ここの1階と2階の間に「M階(mezzanine floor)」があって、そこはセレブさん専用な感じのところ。「いつかここでシャンパン飲みながら何か買ったる!」って思ったっけ。
そんなこんなしながら、何も買えずに店を出る。
あの時、私はどんな顔でここを出たのだろう。さぞや紅潮していたんだろうな。
壁にもたれかかって街並みを仰ぎ見ていると、CDだか何かを押し売りしてくる黒い奴らが絡んできた。クソうざったい奴らだったが、おかげでセンチメンタルを引きずらずに済んだ。
この日はVeterans Dayのパレードとかもあって、のんきに買物する気分にならず。このあとシャネルに行くのも忘れてホテルへと帰ってきた。
途中でディーン&デルーカに寄って、ケーキ2コ買ってやった。
再びティファニーの指輪をはめられる日は遠のくが、ケーキ旨そうなので仕方ない。