八雲の国から末広がり

旧八祐会ブログ

0泊3日の、旅?移動?修行?

去るゴールデンウィークの前半。くさくさした気持ちをどうにか紛らわそうと航空会社のサイトをサーフィン。そしたら格安のチケットを発見。一気に気持ちが楽しくなる。そして1週間後のチケットを入手した。場所はカトマンズ

カトマンズ???な状態からスタートした私の脳みそを、エベレストを「サガルマータ」と呼ぶことぐらいまでにはインテリジェンスに引き上げて、いざ出発。あわよくば上空からサガルマータを拝もうと、飛行機の座席の位置取りまで入念に調べ上げて。

旅の準備も、襟付きのシャツにするか襟なしのTシャツにするかとか、空港で群がる現地の客引き達を振り払いやすくするようスーツケースではなくボストンバックにしようかとか、履き慣れたスニーカーはボロすぎて機内で恥ずかしいが現地ではむしろそのボロ感がイケてる気がするとか、等々、旅の準備をすることで恨めしいゴールデンウィークが急に華やいだ。

 

世間を思いっきり羨ませたろ。

そう思っていざ出発したが…。

 

それからわずか2日後、帰国した。

 

身内に不幸があったとか、具合が悪くなったとか、犯罪して強制帰国になったとか、そういうのではない。お粗末な話である。いくつかの不運が重なってのお粗末である。

 

乗り継ぎに失敗した。

 

5時間もあったのに。

 

先月に母が香港経由でオーストラリアに行った時、直前でゲートが変わったそうな。

「そういうのよくあるよ」

「だからゲート変更がないか常にチェックしてなきゃだめだよ」

って偉そうに言ってた矢先に、これだよ。

 

それでも、ゲートが変わってたぐらいならば乗り遅れない。

ターミナルまで変わってやがった。

ターミナルをまたぐので、また荷物検査の列に並ぶ。

並んだ列の先が閉鎖され、隣の列に並び直させられる。

ようやく荷物検査をくぐり抜けて、ひたすら走る。遠い。すごく遠い。

 

出発予定時刻の10分前、乗客の誰もいないゲートにたどり着く。

ゲートはまだ閉まっていない。よかった、間に合った。

ハアハアと息をきらしながらチケットを渡すと、係員が言う。

「ネクスト フライト」

 

ゲート先に待つのは、飛行機でなく、バス。

いわゆる「沖止め」というやつで、そこからバスに乗って飛行機が待機しているところまで移動する方式だ。もしこれが沖止めじゃなかったら、係員はネクストとは言わなかっただろう。

「4時間後に次のフライトがあるから、上にあがってカウンターでチケットを替えてもらえ。ラウンジに行けばやってくれるから、とりあえずラウンジに戻れ。」

男はそんなようなことを言った。

私はその言葉に素直に従ってしまった。

 

タダで交換できるとまでは思っていなかったが(多少の違約金は払わされるかもと)、まさかその後に「このチケットは交換できない(種別)です。このチケットはもう無効です」と言われるとは、つゆほども思っていなかった。そしてその無効とは、その後の行程をも含めてのことだとは。

それを分かってたら、あの時どうにか拝み倒して乗せてもらってたよ。

 

初めて英語で「オーマイガッ!」って言った。初オーマイガッ。

 

「もう帰ろう」

そうつぶやいて、日本行きのチケットを手配した。

 

よくよく考えてみたら、すぐに帰らず、目的地をアブダビに切り替えて、そこであらためてバカンスしてもよかった。その方がチケットも(若干だが)安くなるし。でも、そんなことは全然思いつかなかった。もう帰ることしか頭になかった。

むしろ「0泊3日、おいしい!」とまで思ってしまっていた。

 

「むしろラッキー」というと負け惜しみにしか聞こえないが、私としては、普通に旅行するよりもよっぽど貴重な体験をさせてもらった。それに、この0泊3日を最初から計画して実行するよりかは(結果的に)安くあがった。

もしも拝み倒して強引に搭乗してたらブログには絶対に書けなかったし。炎上必至。

失敗し、正々堂々と身銭を切ったからこそ、極上のネタとなった。

 

ラウンジには、シャワーも、スパもあったが、一切やらなかった。

脂ぺっとりのまま、窮屈な中を、苦痛に耐えながら帰ってきた。

自分に多少の罰を与えた方がよりおいしくなると、そう本能がささやいた。

どMか。